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高松地方裁判所 昭和48年(行ウ)1号 判決 1978年6月27日

高松市宮脇町一丁目一〇番一号

原告

向井裕

東京都千代田区霞が関三の一の一

中央合同庁舎第四号館

被告

国税不服審判所長

岡田辰雄

高松市楠上町二丁目一番四一号

被告

高松税務署長

富田順三

右両名指定代理人

山浦征雄

三船隆

被告国税不服審判

所長指定代理人

三宅克巳

田村豊

民谷勲

被告高松税務署長

指定代理人

徳永孝雄

加地淳二

安西光男

西原忠信

主文

本件訴訟は昭和五二年七月二六日の経過により訴の取下があつたものとみなされ終了した。

同年九月二八日付をもつてなした原告の口頭弁論期日指定申立後の訴訟費用は、原告の負担とする。

事実及び理由

原告は昭和五二年九月二八日付の裁判継続申立と題する書面をもつて本訴につき口頭弁論期日の指定を求める旨申立て、その理由とするところは、「本件訴訟は、昭和五二年四月二六日の口頭弁論期日に原告は出頭せず、被告両名指定代理人は出頭したが弁論をなさず退廷したため、民事訴訟法二三八条により訴の取下があつたものとみなされているけれども、同条を適用するためには(一)、裁判所が当事者双方に対し訴の取下の意思の有無を打診し、その確認を行うこと、(二)、裁判所は、当事者に対し三か月以内に期日指定の申立をしなければ訴の取下とみなされることになる旨予告することが最小限度の要件であると解すべきであり、さもなければ、同案は、国民の裁判を受ける権利を保障した憲法三二条の趣旨に反する規定という他はない。ところが裁判所は、本件につき、前記(一)(二)の措置をとつていないので、本件訴訟に民事訴訟法二三八条は適用されず、従つて、訴の取下があつたものとみなしえないから、本件訴訟は未だ終了していない。よつて、裁判の継続を求めるため本件口頭弁論期日の指定を求める。」というにある。

そこで判断するに、本件記録によれば、昭和五二年四月二六日の本件第一一回口頭弁論期日の指定は、第一〇回口頭弁論期日に出頭した被告両名指定代理人に対しては法廷で告知し、同期日に不出頭の原告に対しては呼出状を送達し、いずれも適式になされたにもかかわらず、右第一一回口頭弁論期日に、原告は出頭せず、被告両名指定代理人は出頭したが弁論をなさず退廷し、その後、原・被告いずれの当事者からも三か月以内に期日指定の申立がなされなかつたことが認められる。以上の事実によれば、本件訴訟は、民事訴訟法二三八条により、昭和五二年七月二六日の経過により訴の取下があつたとみなされるべきものである。

元来、民事訴訟法二三八条は、当事者双方が口頭弁論または準備手続の期日に出頭せず、または弁論をしないで退廷して期日を空費させた場合、その後三か月以内に期日指定の申立をして弁論する意思のあることを示さない限り、当事者双方に訴訟追行の意思はないものとして訴の取下があつたとみなし、もつて裁判所に多数係属する訴訟事件の停滞ないし遅滞を避けんとする規定であつて、同条を適用するためには、裁判所において、原告が主張する(一)、(二)の措置をとつたことを要件とし、さもなければ、同条は憲法三二条の趣旨に反するとの原告の主張は、ひつきよう独自の見解であつて到底採用することができない。

以上のとおりであつて、本件訴訟は、昭和五二年七月二六日の経過により訴の取下があつたものとみなされ、既に終了しているものというべきであるから、その旨宣言することとし、昭和五二年九月二八日付をもつてなした原告の口頭弁論期日指定申立後の訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 村上明雄 裁判官 佐藤武彦 裁判官小川正明は、転任につき署名押印することができない。 裁判長裁判官 村上明雄)

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